加齢臭は細菌が増えるからではないが、やはり細菌にも目を向けるべき

40代以降の男性には特に気になる加齢臭。化粧品メーカーの資生堂が加齢臭の原因となるノネラールを発見したのが2001年のこと。それ以来、中年男性のなかには肩身の狭い思いをしている人もいるでしょう。

しかし、加齢臭は男性にも女性にも実はあるもので、加齢臭をひどくしていると思われるのには、他の要因が絡んでいることが多いのです。その一つが細菌です。

加齢臭をひどくさせる細菌とは、いったいどのようなもので、どのような予防法があるのでしょうか。

加齢臭には細菌が関係している?

加齢臭は体臭の中でもイヤな臭いの代表のように思われています。加齢臭は会社であればちょうど課長や部長の世代、40代以上の人に出てくる体臭で、スメルハラスメント(臭いによる嫌がらせ)という言葉もあるようです。

こうなってくると、もはや社会問題です。

加齢臭は、人によってその度合いに差があることから、加齢臭がひどい人は肌を清潔にしていないのではないか?肌表面にある細菌が影響しているのではないか?といった噂が出るのも理解できます。

しかし、加齢臭はストレスなどによって過剰に生成される、活性酸素が原因となっておきる「酸化作用」の産物なので、基本的には細菌は余り関係がないのです。では、なぜ細菌が加齢臭と関係しているような誤解を与えているのか?それは、加齢臭の他に、臭いをひどくさせる細菌が肌表面にはびこっているからなのです。

ひどい臭いは皮膚の悪玉菌が関係している?

通常の生活環境において、細菌はどこにでも存在します。家具や布団はもちろんのこと、空気中にも、体の表面や体内にも多数存在します。そのなかには人間に悪い影響を与えるもの、良い影響を与えるもの、どちらでもないものがあります。それらがバランス良く存在していて、人間は健康に暮らせるのです。

皮膚の表面にはブドウ球菌属やミクロコッカス属などの好気性菌や、アクネ桿菌などの嫌気性菌、マラセチア菌、カンジダ菌、白癬菌といった細菌が存在しています。これらは常在菌といい、一過性の感染症を引き起こす細菌と区別されています。

一方で、これらの常在菌も感染症を発症させることがあります。

ブドウ球菌属細菌に属する黄色ブドウ球菌は、食中毒菌起こす菌として有名ですが、表皮ブドウ球菌は皮脂や汗を餌として弱酸性の脂肪酸を産生します。表皮ブドウ球菌は、皮脂腺に棲息するアクネ桿菌から排出される脂肪酸と合わせて皮脂膜を作り、皮膚表面を弱酸性に保っています。

しかし、表皮ブドウ球菌は病原性は低いものの、医療現場において菌血症をおこす主要な感染症起因菌で、アクネ桿菌は過剰に増殖すると化膿性皮膚炎症(ニキビ)をおこすやっかいな細菌です。

このように、皮膚の表面でも腸内と同じように、体に良い菌と悪い菌のバランスが悪くなると、様々な弊害を起こします。臭いに関しては、アルカリを好み、悪臭のもとになる脂肪酸、アンモニアやインドールなどの不快臭を出す『黄色ブドウ球菌』『真菌』が悪玉菌として働きます。

悪玉菌、ヘキサデセン酸のせい?

加齢臭はノネラールという物質が臭いの元になっていることが、最近の研究で明らかになっています。

ノネラールは、汗に混じって出てくる過酸化脂質とパルミトレイン酸が酸化して結合することにより、生成されます。化学的にいうと、パルミトレイン酸にはいくつか構造異性体があり、ヘキサデセン酸、あるいは9-ヘキサデセン酸として解説されている場合もあります。

ここではこの物質が肝臓でパルミチン酸から生合成されることから、パルミトレイン酸と表記します。

加齢臭がひどくなると清潔にしたほうがいいと一生懸命に体を洗いがちになりますが、余り強い石鹸で洗うと、皮膚を覆っている皮脂膜も洗い流してしまいます。そうすると、皮膚表面の最近の環境がバランスを崩し、元に戻そうと皮脂がかえって多く分泌され、パルミトレイン酸も多く分泌されてしまいます。

これがノネラールの生成を促進させるという逆効果になってしまうのです。

パルミトレイン酸とノネナールの関係

加齢臭は中年になるとだれでも存在する臭いですが、正しい肌のケアをしないと加齢臭をひどくする原因になります。

先ほど説明したパルミトレイン酸の増加による加齢臭の増加に加え、悪玉菌の増加によるアンモニアやアルデヒドの生成促進によってより強い体臭が発せられるようになってしまいます。

パルミトレイン酸は、肌を洗いすぎることで皮脂が少なくなりそれを取り戻そうとするために過剰に分泌されるので、汚れだけを洗い流すことが大事なのです。

では、正しい肌のケアはどうすれば良いのでしょうか。

  1. 弱酸性石鹸を使う
  2. 石鹸を泡立てる
  3. ゴシゴシこすらない
  4. かかとや爪の先は丁寧に洗う

この点に注意して洗うようにすると、ある程度皮脂を残した状態で、汚れや悪玉細菌だけを除去することができます。

悪玉菌や外から付着した細菌やウイルスをキレイに除去しようと薬用石鹸を使う人もあるかと思いますが、薬用石鹸では肌表面の常在菌も殺菌してしまう可能性があります。また、短時間の手洗いでは薬用石鹸でも皮膚表面の常在菌はほとんど減らないことがわかっており、わざわざ薬用石鹸を使う必要がありません。それよりも肌の状態に近い弱酸性石鹸を使うことが大事です。

石鹸をタオルにこすりつけてゴシゴシ洗うと爽快感(満足感)がありますが、石鹸は泡で汚れを溶かして取り除くと考えた方が正しいです。できるだけきめ細かい泡を立て、なでるようにして洗いましょう。ただし、爪の先や足の裏などは汚れが落ちにくいので、柔らかいブラシを使って丁寧に角質などを取り除くことが望ましいです。

加齢臭に伴う臭いは、頭皮も重要なポイントです。シャンプーも丁寧に行いましょう。

  1. 頭を洗う時にはまずお湯で毛髪の汚れを流します
  2. 泡を良く立てて、頭皮をマッサージするように洗います
  3. 1日に1回の洗髪で十分
  4. 洗った後はよくすすぐ
  5. 手早く乾かす

肌を洗うときと同じように優しく洗うことを心がけましょう。爪を立てると頭皮が傷つくので、指の腹を利用するか、毛髪ブラシでマッサージするように洗うのがコツです。

皮脂や適度な水分は肌や体内に雑菌が侵入するのを防ぐ目的もあります。ですので、過度に取り過ぎないことが皮脂の過剰な分泌を防ぎ、ノネラールの生成を抑制することにつながります。清潔にすることと皮脂を取り過ぎないことは、一見矛盾しているようにみえますが、正しい洗い方を行うことでノネラールの生成が最小限に抑えられます。

まとめ

中年になると加齢臭がひどくなるといわれますが、肌のケアを正しくすることでずいぶんと違ってきます。加齢臭の原因となるノネラールを減らすには、その材料となるパルミトレイン酸を減らすことがポイントです。皮脂腺から分泌されるパルミトレイン酸を含んだ皮脂は、適量であれば肌を守るために必要なものです。しかし、肌の乾燥や汚れによって肌にダメージが出ると、それを回復させようと皮脂が過剰に分泌されます。そしてノネラール生成の促進を促してしまうのです。

一方で、肌表面を清潔にすることも大事になってきます。肌表面の菌のバランスを整えることが、加齢臭以外の体臭をひどくさせる原因になるからです。肌や頭皮の汚れはできるだけ取り除くことも大事です。

この相反することを両立させるには、肌を洗いすぎないことです。正しい肌ケアをしてこそ、加齢臭を防ぐことができます。